読み書き

本を読んで、血となり肉となるようなことがありました。ものを書いて、いろんな人との出逢いがありました。

漱石

「夢十夜」

「自分はつまらないから死のうとさえ思っている。──(中略)── 自分は益々つまらなくなった。とうとう死ぬことに決心した。それである晩、あたりに人の居ない時分、思い切って海の中へ飛び込んだ。ところが── 自分の足が甲板を離れて、船と縁が切れたその刹…

漱石の目線

もう一度、漱石…「行人」が心に残っている。「猫」も面白かった。漱石を新潮文庫でほとんど読んで、しかし絶えず気になったのは、その言葉の一句一句から「無常」といったものを、その字句の向こう側に、常に感じられたことだった。 虚空を見つめる、とでも…

「行人」の兄さん

漱石に「行人」という小説がある。心に残るのは、その主人公のお兄さん。 自分が今、あのお兄さんと同じような情況だから(もちろん心的に)、残るというより「いる」、自分自身があのお兄さんに投影されている。 漱石の描く世界。「吾輩…」の猫の最期は何度…

「吾輩」君の最期

苦沙弥先生曰く、「死ぬことは苦しい。しかし死ぬことができなければ、なお苦しい。神経衰弱の国民には、生きていることが、死よりも甚だしき苦痛である。したがって死を苦にする。死ぬのがいやだから苦にするのではない。どうして死ぬのが一番よかろう、と…