「面白いよ」と友人から薦められて読んだマンガ。面白かった。
どこからともなく地上に生まれたその生物は、人間の身体に寄生しないことには生きてゆけない。ミミズのような、ヘビのようなその生物は、ヒトの耳や鼻から侵入したり、胸や喉を突き破って入ってくる。そして脳に寄生し、とりついた人間を操作する。
この物語の主人公である人間に、ひとつの寄生獣がとりつこうとしたが、しくじった。右腕から侵入し、脳を目指したが、その道すがらウォークマンのヘッドフォンコードに腕を縛られて、先へ進めなくなったのだ。
一定の時間が過ぎると、そこで「おとな」になってしまう寄生獣は、やむなく主人公の右腕に宿り続けることになる。
右腕だから、「ミギー」という名前。よくしゃべり、勉強好きで、論理的な生物だった。目は一つしかないが、大きくて綺麗で、くちびるがキュートだった。
主人公とミギーは、おたがいに全く「異質な生物」であったが、親友のように仲良くなっていく。
他の寄生獣たちは順調にヒトの脳を占有していったが、このミギーは実に中途半端であった。脳は人間のままで、右腕にしか寄生していない。同じ仲間として他の寄生獣たちは、こんなハンパな奴は危険だから殺してしまおう、というふうになる。
そんな感じで物語が進む中、寄生された人間として最強の能力をもつ「後藤」という者が現れる。
その戦いにおいて、後藤はあまりにも強いので、ミギーは主人公の腕から離れて、つまり「ふたりで」戦う方法をとった。だが、人間から離れた寄生獣は、ひとりでは生きて行けず、数分間離れていると死んでしまうのだった。
後藤をやっつけることができず、「早く戻って来い、一緒に逃げよう」と主人公がミギーに求める。だが、足の速い後藤に、すぐ捕まってしまうのは目に見えていた。そしてミギーが言うのだ、「きみだけ逃げろ」
ふたりとも死ぬことはない。きみだけでも、早く逃げろ、と。
「だって、ミギー…」と躊躇する主人公に、ミギーがさらに言う、「何やってんだ、のろま! 早く逃げろ!」
主人公は泣きながら逃げていく。
… 去っていく主人公を見ながら、ミギーは思う、「今まで、ありがとう、シンイチ(主人公の名前)…。今まで、たくさん、思い出を…」
ああ、もうダメである。書いていて、涙が溢れてくる。
どうも、何か心を地盤から揺り動かすものには、「死」があるようだ。その揺さぶられた心が、涙という発露になって流れるらしい。
なぜ揺さぶられるのか、わからないけれども。