読み書き

本を読んで、血となり肉となるようなことがありました。ものを書いて、いろんな人との出逢いがありました。

雑談

漱石が今の時代に生きていたら? ナンセンスだよ、あの人はあの時代に生まれ、生きた人だ。 今の人が今の時代にこうしているように。 そしてあの時代も、「ほんとうに酷い時代になったものだ」と話していたのさ。 しかし不思議なものだ、あれほど〈現代の青…

カラマーゾフ

サッカーでウクライナのチームと日本のチームの試合が行われたという。なぜ今?「長引く戦争で、だんだん人の関心が薄れてきている」のが理由の一つであるらしい。なぜ関心が薄れるのか? 「ただロシアとウクライナが戦争をしている」という事実、この事実に…

「平和ボケ」をつくるもの 

平和ボケって、何だろう、平和であるからボケてしまうのか、ボケているから平和なのか、と、あまり正面切ってしない逡巡をした時がある。 大江の「遅れてきた青年」と同様的な描写を、山川方夫の「煙突」という作品に見た。彼らはほぼ同世代で、すなわち戦争…

そう、漱石を読んでるんだ。 いいね、やっぱり漱石は。いくらでも読み返せる。 今読んでるのは「文鳥・夢十夜」。漱石の随筆。 半端じゃなかったと思うよ。 でなきゃ、あんな書けない。時代もあったろう、それでも通じてるんだ…

「他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、彼らの信じる神にある。敵の、神こそ、撃つべきだ。敵の神を、発見しなければならない。人間は、自分の中にある真の神を、よく隠す。」 ヴァレリーの言葉。と、太宰が引用していた。 学歴信仰。病院信仰。…

幸せな人は何も書かない?

安定した生活で、何不自由なく、有閑マダムの如き時間を過ごす人が、何か道楽で書いたとしても、それはどんなものだろう。ちょっと読んでみたい。貴族のような毎日を送って、悠然と人生を送る人の文章。興味がある。もしかして、達観した見地から、優雅で、…

道しるべ

何でも、書けばよい遠慮など要らぬ思ったことを書くことそれが本当のこと本当のことを言わぬ人間の言うことをたれが信じ、聞くものかごまかし、あやかしばかりに工夫をこらして自己喪失者の仲間に入るのはやめよ山へ行け、山へ行け「まだら牛」と呼ばれる町…

モラリスト文学

ウィキペディア先生によれば、 「モラリスト(仏: moraliste)とは、現実の人間を洞察し、人間の生き方を探求して、それを断章形式や箴言のような独特の非連続的な文章で綴り続けた人々のこと」 とある。 モラルに重きを置く「道徳家」とは全く別の意味の存…

荷風、三島、鴎外…

実家に行った際、兄とはよく文学の話をする。これが紐帯のようなものかもしれない… 永井荷風全集を読み終えたらしい。荷風は人間ぎらいで、編集者をはじめ色んな人の来訪がイヤで、朝飯を済ませると夜までずっと外にいたという。毎日おきまりの店でカツ丼を…

神と自然と運命と

パスカルとモンテーニュ。 ふたりとも、キリスト者であった。 だが、「パスカルは神に殺された」とニーチェは言う。 その敬虔すぎる信仰心ゆえ、肝心な自分自身がはるか後方に追いやられ、彼自身の創造した神に緊縛されてしまった。だから彼は声高に言う、「…

荘子とニーチェ

漱石が異常な関心を示し、吟味熟読したという「ツァラトゥストラ」。 ツァラトゥストラは言う、「足を地に着けず、逆立ちして行くのがいい」──「重さ」への否定。「超えて行け、超えて行け」の超人思想に疲れた時、荘子の「無為自然」がなんと大きな慰めにな…

キルケゴールの婚約破棄

彼は、レギーネという女性と婚約した。彼女には、すでに両親が認め、結婚を前提に交際する男がいたにも関わらず。 彼は彼女を恋し、愛した。そしてやっと、婚約にこぎつけた。レギーネも、彼、セーレンを愛した。ふたりは婚約指輪を交わした。 それだのに、…

さそい

人間… ああ、矛盾のかたまり。これがイイとなれば、あっちがワルくなりこれが1と言えば 2が出て3が出る一辺倒と程遠い、相対と矛盾のかたまりよだからって、何も考えないのがいいわけがないほんとにバカになってるんじゃないかオレもあいつもこいつもパッ…

「わかる」ということ

キルケゴール。 その著作は、ひどく読みにくい。ワンセンテンスワンセンテンス、時間をかけて、よく、よく考えて行かないと、とてもじゃないが「理解」し難い。 彼の言葉のまま、文字通り読み進めても、キリスト教についてのことなど、チンプンカンプンで、…

共反社

これほど多くの人がありながら共感を求めて尽きないほど淋しい人が多いのだろうか「わかる」の意味もわかろうとせず わかられよう と躍起になって一体何を求めているのか「そんなに共感されたいか」彼が言う彼は恥じる、共感を求める自分を恥じる 個人的な、…

存在を支えるもの

「人生というものは、見る目さえあれば、こよなく豊かなものだ」 ── キルケゴールの「不安の概念」に、ふっと出てきた一文。 私事で恐縮、といっても私事しか書いていないのだが、先日、足腰が自分のものでなくなって、歩くのも難儀になった。 幸い、登山用…

子どもたちの「戦争」

柳美里の「自殺」(文春文庫)を読んでいる。いつ買ったかも忘れるほど、だいぶ前から家にあった本。 おととい、「もうほぼ絶対読もうとしないと思える本」の整理を家人とした。ネットの「もったいない本舗」へ寄付という形で、ダンボール5箱に本たちが収ま…

「愛と苦悩の手紙」

困った時の、太宰です。 サリンジャーのライ麦畑も読んで、面白かったけれど、さて次に読むものが無くなった。 カフカは書き急いだ感じだし、ソルジェニーツィンは読めなかった。 大江もニーチェも入って来ず、O・ヘンリもこんなんだったけという感じ。 サル…

本を手に取り

思わずニヤける。「モンテーニュ随想録」全集。モンちゃんはいい。よくぞ、書いた。あると安心という、精神安定剤のような「エセー」。どうしたって、ニヤける。「荘子」。これも、おおらかな気持ちにさせてくれる貴重な本。苦しみや、異形の者、この世の受…

そう、結局ドストエフスキーは… 「人間は幸福であることに気づかない」 「気づいているが、そこに生きようとしない」 「自らすすんで苦しみの世界に居ようとする」 ということだったと思う。 人間全体のことはもちろん、 全体は個の塊であって、だから個人の…

スクロール、スクロール

セリーヌのことをどれだけ書こうが、ニーチェのことをどれだけ書こうが… 読まれないと思うよ。 お前は彼らの精神、情熱、人間として生きるべき道のようなもの、ブッダやソクラテスにも通じるものだが… それをいくら書いたところで、何にもならないよ。 お前…

漱石の予言と

セリーヌがどう言おうと、日常の暮らしは変わらない。 何千年も前からフリーメイソンが、ユダヤ人が、着々と進めてきた「世界」であるなら、尚更だ。戦争も仕組まれた計画であるなら、お手上げだ。 漱石が「吾輩」で云っていた、「日本は自殺者ばかりになる…

いけないセリーヌ

いかに社会に迎合するか。いかにいいねをたくさんもらうか。 セリーヌ流にいえば、「せんずり、、、、」だ。 そればかり考えてりゃいいのか。 自分のことだけ、自分の満足ばかりのために。 受けを狙い! 評価を気にし! 秒速で流され! 売春婦と買春男! 白…

戦後文学の魅力

椎名麟三、梅崎春夫、武田泰淳らをはじめとする戦後文学。 戦後の焼け野原、近所の、近くにいる者どうし、また日本中が共通意識、認識のもとに助け合い、助け合わずにはいられなかった時代── あのほんとうに助け合う心が今も残っていたなら、と思う。 物がな…

大江さん

大江文学にハマッたのは、40歳の頃だった。 言葉、言語、文字、この表象の世界、大江健三郎が醸し出した象形の世界、象徴された世界に心地よく飛んで、遊んだ。 その世界が、とにかく気持ちよかった。「我らの狂気を生き延びる道を教えよ」が、僕にとっての…

椎名麟三と大江健三郎の死

椎名さんが亡くなった時、お別れの会か何かで「あなたを失って、私たちは何をよすがに、これから生きて行ったらいいのでしょう」と大江さんは弔辞を述べたという。 よすが、だったか、目標、だったか。道標だったか、頼りに、だったか、そういうニュアンスで…

デモクリトスとヘラクレイトス

昔々の哲学者たちは面白い。 (昔々、哲学者は、家の補修や靴の修理、料理から造園まで、「何でも出来る人」だったという。物事の本質を見抜くことに長けていたから、現実の「物」がつくられる道理をよく見えて、「こうなっているからこうなんだな」と理解で…

「追いたい」作家と「もういいや」作家

たとえば「博士の愛した数式」を読んだ。素晴らしい作品だったと思う。でも、この作家の、他の作品も読もう、とは思わなかった。思えなかった。何か、見えた。わかった気になった。ならされた。山口洋子女史、他の作品も、よく売れているらしい。でも、もう…

大江健三郎「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」

これは、確かに難しい。集中せざるをえない。ぺらぺらと読めない。 巻末の頁を見れば、昭和44年発行、現在まで、18刷。18刷?こんな素晴らしい作品が、なぜもっと読まれていないのか。多少の憤りに似た気持ちをもってしまった。 哲学、というものがある。200…

「徳」

ぼくは、子どもの頃、いろんな人に同化した。 大人しい人には大人しく。活発な人には活発に。少し荒くれ者には、ぼくも少し荒くれ気味に。と、自分を相手に同調させ、相手の土俵で相撲をとる、といった関係の仕方をしてきた。自分を同調させる、という意識も…